2017年09月26日
M氏 (前編)
今から20年程前のお話。
その頃私は1970年代に作られた
イギリス製の小さなオープンカーを所有していました。
旧い車を楽しむ趣味人、 “ エンスー ” なんてのが流行ってて
車にそれほど詳しくもないヘッポコな私も
そんな人達との交流を楽しんでいました。
さて。
私の車は購入した時から燃料調整がうまくいかず
レース経験も豊富(?)な車屋さんの主人を手こずらせていました。
低回転でグズるエンジン、
高回転まで廻せば気持ちの良い加速を楽しめるのだけれど、
いかんせん街中では扱いにくい。
点火プラグはいつもまっ黒。
なので予備のプラグは常に欠かせず、
トランクにはプラグと交換のための工具がいつも転がっていました。
そんな時、知人に紹介してもらった車屋さんが “ ガレージ J ” 。
なんとなく近寄りがたい店(というより外観は “ 工場 ” )に、
勇気を出して訪問すると、
奥から出てきたのは、ムズカシイ顔をした初老の主(あるじ)。
私が現在の症状を伝えると、
主は面倒臭そうに、しかし決して馬鹿にしている風でも無く
燃料装置のあたりを見回してくれました。
「油面が高いなぁ。」
ボソッとつぶやき私の方を向いて
「出来ない(診れない)かもしんないよ?」
と言いました。
旧い車と言うのは程度がマチマチです。
また、長い年月の間に
複数のオーナーや複数の整備士の手が加わると
様々なチューニング等に加えて
ワケのわからない改造が
施されている個体があったりします。
そして趣味人口が多いという事は
車に見合わない無知で無茶な依頼や
その店のカラーとは程遠い依頼をする、
いわゆるメンドクサイ客ってのも存在するわけです。
それらからくる、
「出来ないかもしれないよ?」
だったのでは?とその時私は解釈しました。
順番が違ったけれど後から、紹介者の名前を出したら
ムズカシイ顔もいくぶん緩めてくれ
とりあえず預かってくれる事になりました。
出来上がったとの連絡を受けたのは
預けてからちょうど1週間経った日。
私は燃料調整代金3万数千円を持って
再び店を訪れました。
「お世話になりました。」
店をあとにして、
1速で走り出した途端、
思わず声が出てしまいました。
「え?なにこれ?」
低回転のグズグズが嘘のように消え、
素直で扱いやすい車に激変していたんです。
何度調整しても駄目だったのに・・・。
旧い車だからこんなもんだよな、なんて半ば諦めていたのに・・・。
主は私の車を一発で本当の本来の姿にしてくれました。
その主がそれからずっと私の車を診てくれる事になる “ M氏 ” でした。
《つづく》
その頃私は1970年代に作られた
イギリス製の小さなオープンカーを所有していました。
旧い車を楽しむ趣味人、 “ エンスー ” なんてのが流行ってて
車にそれほど詳しくもないヘッポコな私も
そんな人達との交流を楽しんでいました。
さて。
私の車は購入した時から燃料調整がうまくいかず
レース経験も豊富(?)な車屋さんの主人を手こずらせていました。
低回転でグズるエンジン、
高回転まで廻せば気持ちの良い加速を楽しめるのだけれど、
いかんせん街中では扱いにくい。
点火プラグはいつもまっ黒。
なので予備のプラグは常に欠かせず、
トランクにはプラグと交換のための工具がいつも転がっていました。
そんな時、知人に紹介してもらった車屋さんが “ ガレージ J ” 。
なんとなく近寄りがたい店(というより外観は “ 工場 ” )に、
勇気を出して訪問すると、
奥から出てきたのは、ムズカシイ顔をした初老の主(あるじ)。
私が現在の症状を伝えると、
主は面倒臭そうに、しかし決して馬鹿にしている風でも無く
燃料装置のあたりを見回してくれました。
「油面が高いなぁ。」
ボソッとつぶやき私の方を向いて
「出来ない(診れない)かもしんないよ?」
と言いました。
旧い車と言うのは程度がマチマチです。
また、長い年月の間に
複数のオーナーや複数の整備士の手が加わると
様々なチューニング等に加えて
ワケのわからない改造が
施されている個体があったりします。
そして趣味人口が多いという事は
車に見合わない無知で無茶な依頼や
その店のカラーとは程遠い依頼をする、
いわゆるメンドクサイ客ってのも存在するわけです。
それらからくる、
「出来ないかもしれないよ?」
だったのでは?とその時私は解釈しました。
順番が違ったけれど後から、紹介者の名前を出したら
ムズカシイ顔もいくぶん緩めてくれ
とりあえず預かってくれる事になりました。
出来上がったとの連絡を受けたのは
預けてからちょうど1週間経った日。
私は燃料調整代金3万数千円を持って
再び店を訪れました。
「お世話になりました。」
店をあとにして、
1速で走り出した途端、
思わず声が出てしまいました。
「え?なにこれ?」
低回転のグズグズが嘘のように消え、
素直で扱いやすい車に激変していたんです。
何度調整しても駄目だったのに・・・。
旧い車だからこんなもんだよな、なんて半ば諦めていたのに・・・。
主は私の車を一発で本当の本来の姿にしてくれました。
その主がそれからずっと私の車を診てくれる事になる “ M氏 ” でした。
《つづく》
Posted by すがぬま理髪店 at
20:00
│バイクと育児と少年時代