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2013年01月09日

ある老人

近所の老人ホーム出張カットに行ってきました。


スタッフの方が言います。

「今日はAさんもカットをお願いします。」

はい、わかりました。

「Aさん・・・今回で最後のカットになりそうです。」

あ、そうなんですか。

入院されるか、他の施設へ移られるかで、

退所なさるんですか?

「いえ・・・実は終末期で・・・。」

・・・。(言葉を失いました。)

終末期とは、医師によって不治の病であると診断をくだされ、それから先数週間ないし数カ月(およそ6ヶ月以内)のうちに死亡するだろうと予期される状態になった時期。今回のAさんは終末期も後期で、あと数日という状態。


Aさんを初めてカットしたのは5年前。

入所時から認知症がひどく、

絶えず体を動かしているので、

カットのやりにくい方でした(失礼ながら)。

認知症の方でも、

話しかけながら、

要は、騙し騙しカットの出来る方もおられますが、

Aさんはこちらの言葉を

聞いてくれない方(理解できてるかも疑問)で、

カットクロスを巻くのも一苦労。

手を出して攻撃してくる事もしばしば。

カット用に目の前に置いた鏡に映る自分と

喧嘩をしたりもしていました。

(興奮するので鏡を置けない時もあったな。)


だからカットは毎回2~3人がかり。

カットするのに1人、

攻撃の手を防御するのに1人、

場合によって絶えず動く頭部を保持するのに1人。

刃物(ハサミ)でお肌を傷つけてはいけないと、

細心の注意を払ってカットをしていました。

そんな調子なので、

納得のいくカット(きれいなカット)は到底できません。

とりあえず短くなったからヨシとしよう・・・

そんな感じ・・・。



さて、

順番がきてAさんのお部屋に行くと、

「ん~、ん~。」

と何か言葉らしき声(?)。

目も開けていました。

あれ?思ったより元気?

「体温も下がってきちゃって・・・。」

そうですか。

Aさーん!髪、伸びたね、ちょっと切らせてね!

言葉を理解してくれない(と思われる)方にも、

必ず声をかけてから始めます。

返事が返ってこなくても、

世間話をしながらカットをすすめます。

(わからないだろう、と思っても

失礼に値する言葉は絶対に口には出しません。)

チョキチョキ。

もう、手を出す力も無いんですねぇ。

首も全然動かさないや。

Aさん、こんなにカットがしやすいのは初めてだよ。

ほら、今日は僕一人でできるもの。

そうだ、今日はヒゲも剃っちゃおうか。

ヒゲやるのだって初めてだねぇ。

チョキチョキ。


傍にいたスタッフの方の、

「あさって・・・くらいかなぁ。」

って言葉にドキッとして、

でもどういう意味か聞けず・・・、

でもなんとなく悟って・・・。


全て終え、部屋を出る時、

Aさん、またね。

と声をかけました。



・・・。

あ、『また』は無いのかな。

(でもうちのバアチャン、あと数日って言われて半年生きたからなぁ。)

Aさん、

もう少し頑張って次のカットの予約もしてくれるとうれしいけどな。  
タグ :理容


Posted by すがぬま理髪店 at 15:27Comments(2)すがぬま理髪店