すがぬま理髪店

昭和６２年春、地元の高校を卒業した僕は、

東京都杉並区のとある理容室に修行のため入店。

この時から６年間の東京生活が始まりました。

ここでは、その頃の日常の出来事を綴っていきます。




お店にＴＶ出演の依頼が来ました。

「番組内の『気を使う客』というコーナーで使う映像を撮りたい。」

というもの。

撮影は支店で行われました。

本店から電車で３０分かかる支店はスタッフ２人の小さなお店。

スタッフを本店から日替わりで派遣し、

ご来店のお客様に毎回新鮮な気持ちで

カットの時間を過ごして頂こうというコンセプトのお店。

撮影日のスタッフは２年先輩のかーむらさんという女性と僕。

撮影日のみ告げられただけで「○○時に」という約束は無かったので、

朝からドキドキしながら待ってました。


開店後、お客様のカット中に撮影クルー到着。

「ヘアサロンに『気を使う客は？』というアンケートを取った所、

『ウトウトしているお客さん』という答えが１位でした。

そこで『ウトウトしているお客さんに一番気を使いますね』と

おっしゃって欲しいんです。」

えー？『気を使う客』について

事前にアレコレ考えたかーむらさんの苦労が水の泡じゃん（笑）

て、ヤラセかよ？！（爆）

今考えるとそのアンケートもアヤシイし＾＾

お客様をカットしながら、撮影開始。

「やはり、ウトウトしているお客様に一番気を使いますね。」

「やはり、ウトウトしているお客様に一番気を使いますね。」

「やはり、ウトウトしているお客様に一番気を使いますね。」

カメラの方を向き、何回か撮影。

一言だけなので撮影はすぐに終了。



帰宅後、撮影の様子を先生（オーナー）に伝えると、

「床屋は刃物を使う仕事だから、

ウトウトしているお客さんには確かに気を使うけど、

こちらの技術が気持ちイイからウトウトされるのであって

『迷惑な客』って意味で放送されるとちょっと違うね。」

てな事を言われました。


先生（オーナー）は業界では有名な育毛の先生。

風貌にもインパクトがあり知識も豊富で饒舌。

だからかＴＶにも多く出演されていて、雑誌の取材も多々。

今回の依頼も過去のＴＶ出演スジからのものだったのでしょう。


さて放送の日、スタッフが勢揃いしＴＶにかじりついて鑑賞。

撮影クルーは何店舗か撮影に行ったらしく、

うちのお店以外にも同じセリフをしゃべらされてるヘアサロンスタッフが

何人も映っていました。

VTR終了後、

番組ゲストの山城新伍は映っていたかーむらさんをえらく気に入り

「あの娘サンの働いている店を教えろ。」

などと言って出演者の笑いをとっていました。



そして、しゃべるかーむらさんの後ろで僕もちっちゃく映っていました。



もう２０年以上も前の僕のTVデビューのお話でした（笑）

おしまい＾＾



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